加齢黄斑変性症の治療

加齢黄斑変性症は発症してしまうとなかなか治療が難しい病気のひとつですが、

その治療にもいくつかの方法があります。今回はそれらについてみてまいります。

 

加齢黄斑変性症にも段階があります。

加齢黄斑変性症は脈絡膜新生血管が生えてくることから始まります。

生えてきただけの状態であれば、見え方にそれほど異常を起こすことはなく、

若干のゆがみを感じる程度のことが多いです。

この段階であれば基本的には経過観察をおこないますが、

ルテインなどが含まれたサプリメントを摂取することで維持できる可能性があります。

状態によっては、内服薬を処方することもあります。

新生血管が眼にとって悪さをするようになると、

新生血管のまわりに水がたまるようになったり、むくみが出てくるようになってきます。

このような状態になると『活動性あり』と判断し、

新生血管の勢いをなくすよう、治療を開始します。

最近では抗VEGF薬の注射が一番おこなわれる治療ですが、

脳卒中や心筋梗塞などの既往のある方には副作用などの観点から使用しにくい薬です。

そういった方には、以前からの治療である光線力学療法

(こうせんりきがくりょうほう:Photo Dynamic Therapy: PDT)がおこなわれることもあります。

PDTは、簡単に言うと点滴をしたあとにレーザーをする治療です。

ベルテポルフィンという薬を点滴すると、その薬が脈絡膜新生血管に集まってきます。

そこに網膜にダメージを与えにくいようなレーザーを当てると、

ベルテポルフィンが新生血管を閉塞させるため、加齢黄斑変性の治療につながってきます。

ベルテポルフィンは光によって活性化されることから、

治療して1週間程度は強い光を浴びないよう、

初回の方は入院治療をおこなうことが勧められています

(蛍光灯の明かりなどは問題ありません)。

また、退院してからも帽子やサングラスの着用、夏場でも長袖を使用し、

光が直接体にあたらないようにする必要があります。

抗VEGF薬でもPDTでも、一度の治療で終了する症例は多くありません。

経過をみていく中で、再発傾向が出てくれば再度治療をしていく、という繰り返しが必要です。

そのまま治療せず放置すると、線維化といってものを見る中心部分が完全に傷んでしまい、

治療しても治らなくなってしまいます。

欧米では加齢黄斑変性症は失明原因の第1位となっており、

日本人においても第4位と増加傾向にあります。

治療のタイミングを失うと、見え方を維持するのが難しくなってしまうため、

注意してみていきましょう。