散瞳の目的

前回、眼科受診の際に散瞳して検査を行うことがあると述べました(散瞳について)。

検査を行うのはどういう場合か、について説明してまいります。

 

散瞳検査の目的には以下のものなどがあげられます。

  • 正確な眼底検査のため

眼底検査の際には光をあてて目の中の状態を確認します。

ただ、瞳孔は光を当てると小さくなる(縮瞳する)という性質がありますので、

網膜の端のほうの病気はなかなか見つけることはできません。

そのため、散瞳することで瞳孔を広げたままにし、

光をあてても縮瞳しないようにして検査をおこない、

端のほうの病気を見逃さないようにします。

  • 手術前の評価のため

白内障手術などをおこなうときには水晶体の処理をしっかりおこなうために、

散瞳した状態で手術します。

そのため、手術の際にどのようになっているか、

ある程度予測するために(手術難易度がどれくらいのものか)散瞳することがあります。

  • レーザー、手術などの治療のため

レーザー治療や手術の際には必要な部分をしっかりと治療できるよう、

散瞳した状態でおこなうことが多いです(レーザーや手術の種類にもよります)。

  • 小児において、目の状態をしっかり確認するため

お子さんは目の対応力が強く、遠くから近くに瞬時にピントを合わせることができます。

逆に、ちょっとしたことで目の度数が変動するということでもあります。

メガネが必要か、などを検査するには正確なデータが必要となるため、

散瞳薬を入れて度数を安定させたうえで検査をおこなっていきます。

  • 炎症のある目の安静を保つため

目の中、とくに虹彩などに炎症が起こった場合に散瞳薬を使用することがあります。

虹彩は入ってくる光の量を絶えず調整しており、よく動いている組織です。

ただ、炎症があるときに働かせてしまうと、より炎症が悪くなってしまいます。

まず炎症を落ち着かせるために、

虹彩を働かせすぎないように散瞳薬を治療として使うことがあります。

 

散瞳に使用する点眼にもいくつか種類があります。

  • トロピカミド/フェニレフリン塩酸塩(ミドリンP®)

一般的によく使われる散瞳薬です。強い散瞳効果があり、約5~6時間効果が持続します。

たまにアレルギーのある方がいらっしゃいます。

  • トロピカミド(ミドリンM®)

トロピカミド/フェニレフリン塩酸塩に対してアレルギーのある方、

散瞳により発作を起こしやすく(詳細は以下)あまり散瞳し過ぎたくない方に使われます。

  • シクロペントラート塩酸塩(サイプレジン®)

お子さんの目の度数を正確に判断する際によく使用されます。

  • アトロピン硫酸塩水和物(アトロピン®)

散瞳効果は中程度ですが、約1週間程度効果が持続します。

虹彩の安静をはかるのに使われます。

 

散瞳薬を使用する際に、急性緑内障発作には注意しておこないます。

もともと前房が浅い(水晶体と角膜の距離が近い)かたは、

散瞳することで眼圧が急上昇する可能性があります。

前房の浅い方は市販の風邪薬などでもそういったことを起こす可能性があるため、

眼科で前房が浅いと指摘されている方は注意してください。