白内障の全身への影響

白内障は見え方に影響するのみと考えがちですが、実は全身のさまざまな部分に影響がでることが報告されています。

今回はそれについて取り上げてみます。

 

白内障が出てくると、視力が低下し、見えにくさを感じるようになります。

以前述べさせていただきました(アイフレイルについて)、いわゆるアイフレイルの状態です。

見えにくさを感じるようになると、運転や読書などの妨げとなり、

QOL、つまり生活の質が低下してしまいます。

また、運動もおっくうになってしまうことが多く、

運動機能の低下から寝たきり状態への移行、さらには認知症が進行することが言われています。

視力と認知症の関連については、2900人の65歳以上の方での調査がなされています。

視力が良好(0.7以上)な方の認知症の割合は約5.1%だったのに対して、

視力が不良(0.7未満)な方の認知症の割合は約13.3%と、

視力良好な方では認知症の割合が少なかったとされています(Biores Open Access. 2016.)。

次に、体内のリズム(生体リズム)が崩れてしまう可能性があります。

睡眠・体温・内分泌・代謝・循環・精神機能などに関与するホルモンなどは、

光を目で感じることで調節されています。

そのため、白内障が進行し、目に入ってくる光が減ってしまうと生体リズムが崩れてしまい、

体調の変化をきたしやすくなる可能性があります。

これは血圧などにも影響を及ぼします。

血圧には日内変動といい、日中と夜間(睡眠中)では変動があります

(通常、夜間は血圧が下がります)。

睡眠中、血圧の低下がないと突然死のリスクが上がると

報告されたことがあります(Lancet. 2007.)。

実は白内障の方は白内障のない方と比較して

夜間血圧が高いとされており(Hypertens Res. 2019.)、

白内障はそういったことにも影響を及ぼしているといえます。

 

以上のことから、白内障治療をすることで、

認知症や寝たきりの予防、

生体リズムの改善および血圧の改善などにつながってくる可能性があります。

問題なく見えている状態ならよいのですが、見えにくさなどを感じるようになれば、

がまんして様子を見るのではなく、手術治療も考えてみてもいいのではないでしょうか?