硝子体手術後の姿勢の維持
網膜の病気などの治療で硝子体手術をおこなった際に、
術後に特殊な姿勢の維持をお願いすることがあります。
どういったことか、詳しく見てまいります。
黄斑円孔や網膜剥離に対して硝子体手術をおこなった場合には、
ほぼ全例で術後に下向きの姿勢をとっていただくことになります。
この理由は、『術後に目の中にガス(空気)が入った状態になるから』です。
まず黄斑円孔についてみていきましょう。
黄斑円孔は、ものを見る中心部分に穴が開いてしまい、中心が見えにくくなる病気です。
この穴を閉じさせるために硝子体手術をおこないます。
穴になっている部分に圧力をかけることで穴を閉じやすくします。
そのために、最終的に眼内にガス(空気)を注入して手術を終了します。
実はこのガス、気体であるため上に浮こうとする浮力が働いています。
この浮力を穴の部分に伝えることで、穴を閉じやすくしていきます。
浮力が働くということは、目を正面に向けている時には
頭のてっぺんに力が働くようになっています。
今回閉じさせたい穴の部分は黄斑部、つまり目の一番後ろの部分です。
その部分に浮力を働かせようとすると…そう、目を下に向ける必要があります。
目を下に向けているだけではしんどいので、
顔ごと、頭の向きを下向きにする必要があるということになります。
網膜剥離についても考え方は同様です。
ガスの浮力によって、はがれてしまった部分をもとの位置に押し付け、
再度くっつけるように手術をおこないます。
この病気に関しては、網膜剥離が起こっている場所がどこかによって、
横向きをしてもらうこともあります。
他の網膜の病気においても、手術中に網膜の弱い部分などがある場合には
ガスを注入して終了することがあります。
その場合も術後の頭位指示が出ると思いますので、それに従っていただければと思います。