糖尿病網膜症
糖尿病網膜症も網膜の血流が悪くなることにより起こる病気のひとつです。
糖尿病では微小血管障害といって、小さい血管がダメージを受けてしまう特徴があります。
それにより起こる合併症として、糖尿病神経障害、糖尿病網膜症、糖尿病腎症があり、
これらが糖尿病の3大合併症といわれています。
一般的に『し・め・じ』の順(神経障害→網膜症→腎症)で起こることが多いとされています。
眼科では糖尿病網膜症を扱うのですが、網膜症も3段階に分けられています。
- 単純糖尿病網膜症
- 前増殖糖尿病網膜症
- 増殖糖尿病網膜症
この3段階があり、単純糖尿病網膜症が一番軽度、増殖糖尿病網膜症が最も重症となります。
適切な治療を受けなければどんどん進行していってしまいます。
糖尿病網膜症は以前には視覚障害の原因の第1位でした。
治療の進歩とともに2019年には第3位となっています(Jpn J Ohpthalmol. 2019.)。
ちなみに第1位は緑内障です。
糖尿病網膜症も『網膜の静脈が詰まってしまうと…』で述べたような流れで悪化していきます。
単純糖尿病網膜症の状態では小さい血管がダメージを受け、小さい出血が多数出てきます。
単純に出血があるのみですので、単純糖尿病網膜症と呼ばれます。
そこからさらに進行すると、
ダメージを受けた血管の周辺は無灌流領域(血流がなくなった部分)となります。
無灌流領域が広がってくると、その部分に新生血管が生えてきます。
この状態が前増殖糖尿病網膜症です。
増殖糖尿病網膜症になる前の段階なので前増殖糖尿病網膜症といいます。
新生血管が複数生えてくると、それぞれが手をつなぐようになり、
網膜の上に一枚膜が張ったような感じになります。
この膜を増殖膜といい、増殖膜がある状態は増殖糖尿病網膜症といわれます。
さらに、この3段階とは別に、糖尿病黄斑浮腫および新生血管緑内障という状態があります。
糖尿病黄斑浮腫は、ものを見る中心部分の黄斑部がむくんでくることをいいます。
糖尿病では血管が障害されるため、血管からの水漏れが起こってきます。
これにより水が黄斑部にたまってしまうと黄斑浮腫となり、
見えにくさやゆがみの自覚がでてくることがあります。
血管障害は単純糖尿病網膜症の段階でも起こっていますので、
単純糖尿病網膜症の状態でも糖尿病黄斑浮腫を起こすことがあります。
血管新生緑内障は、名前の通り新生血管によって緑内障が起こってくる状態です。
網膜全体に無灌流領域ができてしまうと、網膜のみならず、
虹彩(茶目の部分)にも新生血管が生えてくることがあります。
眼の中には絶えず房水という水の流れがあり、
眼の栄養を保っています(『眼圧とは』をご参照ください)。
房水の流れが眼の外に出ていく部分が虹彩と角膜のあいだにある線維柱帯という部分ですが、
虹彩に新生血管ができると線維柱帯をふさいでしまいます。
すると、房水の逃げ場がなくなってしまい、
眼圧が上昇してしまう緑内障の状態になってしまいます。
この状態になってしまうと早急に治療しないと失明してしまいます
(治療したのに失明してしまうことも多いです)。
以上のように糖尿病が眼にでてくるとさまざまな状態を引き起こしてきます。
初期には自覚症状がないことも多いため、診察して確認していく必要があります。
糖尿病で治療中のかたは、定期的な眼科通院を心がけましょう。